スイスで冬と言えば大半の人がスノースポーツを思い浮かべるだろう。その一方で、スイスの湖や河川でスキューバダイビングをするのは、冬が一番適したシーズンだと言う人もいる。山の国スイスでの、知られざるダイビング事情を取材した。
ここはヴォー州にあるサン・プレ。寒さが身にしみる夜、辺りは暗くレマン湖は闇の中だ。ローザンヌ市と湖の反対側にある保養地エビアンの町の明かりが薄い夜霧でぼんやりとかすむ。暗がりの中で灰色に光る水の表面温度は摂氏13度。あまり水に入りたくなるような温度ではない。
近くの公園では、地元のダイビングクラブ「イマージョン」のメンバー4人が、毎週1回行っている「水中遠足」の準備をしている。ダイビングマスクを着けタンクを背負うと彼らのシルエットは少しカエルに似たような姿になった。
湖の浜辺を2人組みになって歩きながら「(夜中に)潜っても何も見えないのでは、と言われるが、そんなことは全くない」と言うのは47歳のクロードさん。
1歳年下でダイビングのパートナー(ダイビング用語では「バディ(buddy)」と呼ぶ)のフロールさんもうなずく。「湖に潜ると、自分の周りに何があるのか体ではっきりと感じる。海ではどちらかというと目で見て周りを確かめる。だから潜った感じが全然違う」