150年前、雪で覆われたアルプス山脈は、誰も訪れることのない、ただの広大無辺な場所だった。その後、澄んで乾いた山の空気が健康に良いことから、肺疾患の患者が保養地として訪れるようになった。そして彼らが再び健康を取り戻す頃には、そこでの冬の素晴らしさにすっかり虜(とりこ)になっていた。スイスのウインター・ツーリズムのはじまりだった。
スイスのウインター・ツーリズムは、グラウビュンデン州のサン・モリッツとダボスの保養地が出発点だ。スイス国内だけでなく世界中から人々が訪れたが、特にイギリスやドイツからの訪問者が多かった。スケートリンクやそり滑り用滑走路の第1号が設置され、華やかなホテルが建てられた。雪上や氷上の競馬も人気を博した。スキーが行われるようになったのは、そのあとだ。
スイスの地理と、その美しい山並みの景観は、スイスがウインター・スポーツのメッカとして今日も親しまれるわけの一つだ。ピッツ・ベルニナ、アイガー、メンヒ、ユングフラウ、マッターホルンなど、名峰は数多い。