九州ほどの面積に、四つの公用語が存在するスイス。特にフランス語地域とドイツ語地域では、投票行動などの政治面や、文化面で大きな違いがあるとされる。こうした言語地域間の「溝」を世界無形文化遺産に登録しようという動きが今、一部の市民の間で起きている。
フランス語地域とドイツ語地域では、国民投票時に投票行動の違いがみられることが多く、こうした言語地域間の違いはスイスでは「レシュティの溝」と呼ばれている。レシュティ(Rösti)とはジャガイモのガレットのこと。ドイツ語地域で食べられることが多く、逆にフランス語圏ではあまりみかけられないことがその名の由来とされる。
「レシュティの溝は、多様性の中でも一つにまとまろうとする意志を象徴している。国の『息づく伝統リスト』に登録されるべきだ」。アールガウ州ブルックのヴィンドニッサ博物館の主張は今、スイスで波紋を呼んでいる。
さらに、同館展示「レシュティの溝 スイスをつなぐもの」のオープニングでレネ・ヘンギ館長は、「レシュティの溝をヨーデル、フォンデュ、アルプホルンとともに、ユネスコ(国連教育科学文化機関)の無形文化遺産に登録すべきだ」と述べ、近々署名集めを開始する予定だと話した。